ボブ・ディランについて書いてみたい③ アナーザーサイド
1 「Another side of Bob Dylan」もう一人のボブ・ディラン
ボブ・ディランは、始め、ウディ・ガスリーに傾倒し、フォークソングやブルースを歌い出した。
ディランは、その豊かな詩才と独特の歌唱力によって、当時、アメリカが抱えていた社会問題(反戦運動、公民権運動、黒人差別など)をえぐり出した。
「戦争の親玉」「しがない歩兵」「神が味方」「ノースカントリーブルース」、「ハッティキャロルの寂しい死」などがその代表曲だが、歯に衣(きぬ)着せぬメッセージは、鋭い切れ味で、アメリカ人の心に突き刺さった。「戦争の親玉」などは「戦争をやって、そんなに金が欲しいのか?」とアメリカの軍事産業を批判している。
しかしながら、そういったプロテストソングを歌うディランは、彼の一面でしかなかった。そういった社会派運動の旗手として、いつまでも彼らに担がれることは、ディランにとって重荷であり、不本意でもあった。
「Another side of Bob Dylan」は、ディランの変節を示す実験的なアルバムだった。
ディランは元々、プレスリーのロカビリーに憧れていた。もちろんビートルズの影響もあったと思うが、このアルバムで初めてロックへの転向を示す曲が登場し始める。
そして、「自由の本当の意味」について、ディランは、このアルバムで問いかけている。
2 「All I really want to do 」僕が本当にしたいこと
このアルバムのトップバッターの曲で、童謡みたいなユーモラスな曲である。
友達との付き合い、恋人との付き合い、国同士の付き合いなど、種々の人との関わりにおいて、この歌はとことん考えさせられる。友を愛すること、恋人を愛すること、国を愛すること、それらは常に一方的なものではなく、節度とマナーがいることを教えてくれる。この曲の面白さは動詞がみんな韻を踏んでいて、ボキャブラリーが炸裂するところだろう。英単語の勉強にはいい題材になるかもしれない(笑)。
全部面白いのだが、その一部を、また、英語と意訳で紹介したい。
All Ireally want to do is, baby, be friends with you
| Iain’t looking’
To compete with you Beat or cheat or mistreat you Simplify you classify you Deny, defy or crucify you
|
君と 張り合おうなんて
そんな気はないよ 叩いたり、騙したり、虐待したり 単純化したり、区別したり 否定したり、無視したり、まして、 十字架に吊るそうなんて思ってないよ |
| All Ireally want to do
Is ,baby, be friends with you No ,and I ain’t looking’ To fight with you Frighten you or tighten you Drag you down or Drain you down Chain you down or Bring you down |
僕が本当にしたいこと、
それは君と友達になることなんだ 違うよ、君と戦おうなんて そんな気はないよ 脅したり、締め付けたり 引きずり降ろしたり ぐったりさせたり 鎖につないだり、 撃ち落とそうとなんて思っていない
|
| All Ireally want to do
Is,baby, be friends with you I don’t want fake you out Take or shake or forsake you out I ain’t looking for you To feel like me See like me or be like me All Ireally want to do Is, baby, be friends with you |
僕が本当にしたいこと、
それは、君と友達になることなんだ 君をはめようなんて思っていない 取り除いたり、振り落としたり 見捨てようとか言うんじゃない 自分と同じように感じてとか 同じ見方をしてとか、僕みたいになってとか そんなことを望んでるんじゃないんだ 僕が本当にしたいこと、分かってくれるかなあ それは、君と友達になりたいだけなんだ |
誰しも思い当たるふしがあるだろう?自分が自由になるためには、まず、相手の自由を認めなければならない。相手の人格を尊重しなければならない。
「Feel like me ,See like me, Be like me」この最後の一節に、わたしは打ちのめされた。

