米津玄師の世界 ② かいじゅうずかん

1 かいじゅうずかんを手に入れる

米津さんの卓越した才能は、音楽だけではなかった。美術関連の才能もすごい。アイネクライネのアニメの動画もきれいだが、たまたま、ネットで調べていると、2016年12月に「かいじゅうずかん」というイラスト集を発刊していることを発見した。さっそく、アマゾンで発注した。届いたので開けて見ると、一枚ごとの独立したイラスト集で、41体の「かいじゅう」が描かれており、その裏面に各々の「かいじゅう」の生態などの解説が記されている。

それに加えて、loveというタイトルのCDが付いている(こちらの方はゆっくり聴くとして)。

41体のかいじゅうがそれぞれユニークで興味深い。

2 「かいじゅう」の定義

  1. 人語を話す、または高度に理解すること。
  2. 従来の分類学にはまらず、それ一種のみの独立種であること。
  3. 人間の知識や科学では解明できない能力を持っていること。
  4. もともとは人間であったが、なんらかの理由により人間と呼べない状態になっていること。

このうち2つ以上の特徴を有していた場合、かいじゅうと定義される。

以上が作者の「かいじゅう」の定義であるが、これによると、「かいじゅう」は、言葉が話せ理解でき、かなり人間に近い存在である。人間の知識では解明できない能力もあるという。また、もともとは人間であったが、なんらかの理由で人間とは呼べなくなっているらしい。

もうこれは、人間に対する痛烈な皮肉であり、風刺である。というのも、現実社会のなかに、こういった「かいじゅう」もどき、「妖怪」もどきの人間がいっぱいいるからである。

愛すべき「かいじゅう」を何体か紹介したい。

「消息通知人」(米津玄師 著 「かいじゅうずかん」)

かいじゅうずかん消息通知人

(裏面の解説)

死期が近い人のもとに現れ、その人の目の届く範囲から旗をふりつづける。時に川の対岸から、時にマンションの屋上から、時に自宅のベランダから。

他の人には見えない。最初のうちは白い旗をふっているが、ある日突然黒い旗をふるようになり、そうなると旗をふられた人はその日のうちに死んでしまう。人語を理解し、話すことができるが、懇願や取引に応じることはない。彼曰く「飽くまで自分は通知人であり、結果を変えることはできない」とのこと。

「消息通知人」は一番好きだ。懇願や取引に応じられないとは、人間の死は運命であるから変えることができないということだろう。しかし、白旗をふっているときはまだ死なないのだから、ひょっとしたら、何かをすれば死を遠ざけることができるのかもしれない。

わたしの仕事柄、会社の倒産などの局面に良く遭遇することがある。会社をつぶす経営者の特徴は、頭の中に「利益構造」がないことである。絶対に儲からない仕組みが脳の中にできている。いくら、説明してもそれが分からない。営業力や先駆性においては、ずば抜けた感性を持っているが、利益の意味が分かっていないため、資金繰りで無理をする。損をしても大きな入金があれば、それを果実だと勘違いして、新たな投資をする。こういう癖のある経営者は必ず会社を潰す。

消息通知人(わたし)は、盛んに白旗をふるのだが、いっこうに気付いてくれない。ここで感づけば、かなり延命できる。しかし、本人の遺伝子を変えることはできず、また同じ失敗を繰り返し、会社を潰してしまう。まあ、こういう経営者は、「倒産請負人」という「かいじゅう」に生まれ変わるのかもしれない。

つづく

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