流行る店流行らない店 ⑥ 福島区のバー
1 どんどん増えるバー
最近、大阪福島駅界隈では「バー」がどんどん増えている。福島だけで60件は超えているらしい。
それだけのお酒の需要が福島にはあるのだろう。JR大阪駅から一駅で、すべての電車が停まり、阪神福島駅あり、JR東西線新福島駅ありだから、交通の要所でもある。
さらに、タワーマンションが続々と建設され、地元住民も増えているので、おのずと人が集まってくる。そこを狙って、居酒屋、レストラン、バーが乱立する。
レストランでお腹を膨らした後、まっすぐ家には帰れない気分。そんなとき、一人で飲むか、誰かと語りながら飲むか?バーはその点、気楽である。カップルで話すもよし、仲間と語るもよし、バーテンダー(店主)との会話もよしである。ときに、隣のお客と意気投合することもあり、これもまた、一期一会で楽しい。
2 バーの決め手、とりあえず4個
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店主(バーテンダー)の魅力
バーの魅力とは、何回もその店に足を運ばせる中毒性があるかどうかであろう。そして、その中毒性は店主(バーテンダー)の人柄と魅力から生まれる。店のドアーを潜った瞬間の挨拶から始まって、カウンターに着いたとき、どんな酒を選ぶのかの店主との会話、取るに足らない日常会話、お酒の蘊蓄や、趣味の話に対する受け応え、そしてお別れの挨拶などのすべてをひっくるめて、店主(バーテンダー)の評価は決まる。
店が満員でお客を断るときでも断り方も大事である。わたしも頻繁に通っていた店の店主(バーテンダー)から、ある日、カウンター越しに、両手を交差させ、ペケポンで断られたことがある。それから二度と、その店のドアーに手を掛けることはなかった。
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店の構え、造り、レイアウト
バーは雰囲気が重要である。入口の門構え、カウンターの奥行き、カウンター板の素材や分厚さや広さ、天井の高さ全体のレイアウト、バーテンダーとの距離感、椅子の感触座り心地、壁面に掛けられた絵画やポスター、バックの棚に置かれたお酒の種類や飾られ方、その他グラスの形、ロック(氷)の形、トイレの位置やトイレの清潔さなどどれ一つとして手は抜けない。
バーは一つの家であり、隠れ家であり、店主(バーテンダー)の人格そのものである。
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お酒の種類と蘊蓄
お酒の種類はスコッチ、バーボン、ジン、ウオッカ、ワイン、焼酎など、きりがないが、スコッチ、バーボン、ワインに特化した店が面白い。わたしは糖質制限をしているので、ワインは飲まない。
もっぱら、スコッチである。店主(バーテンダー)にその時の気分で、ピートの効いたものから、フルーツの香りのする優しい味わいのものなどを選んでもらう。店主お勧めのスコッチは、大概、ロックで飲む。それ以外は炭酸で割る(いわゆるハイボール)、店主のスコッチに対する蘊蓄を聞くのも実に楽しい。
その解説もすぐ忘れてしまうので、次に行ったときには、その銘柄を思い出せないので、瓶の形やラベルや味わいなどで必死に思い出す。やはり、店主がお酒に詳しいに越したことはないだろう。
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おつまみ、付け出し、など
おつまみや付け出しも、その店の個性が出る。おしゃれなお皿に旬のものが盛られているのが良い。
バーに行く時間帯は大体10時過ぎるになるので、小腹が空く頃である。こんなとき、ちょっとした料理がお客を喜ばせる。チーズやウインナーの盛り合わせに工夫があるのはもちろんのこと、その店独自のカレーなども幸せな気分にさせてくれる。
これからのバーは、気の利いたおいしい料理が出せることも、決め手の一つになるだろう。
3 福島区で魅力のバー
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バー宮崎
バー宮崎は、2のバーの決め手4個すべてを整えていると思う。店主の人柄は穏やかで、また仕事熱心である。元々は野田で長年バーをされた後、福島に移られたそうである。福島に来るのが夢だったと言われる。福島では開業から1年余りであるが、地元も含めてファンが定着してきている印象を受ける。
店主のお酒に関する知識は豊富で、わたしはスコッチに関して何も知らなかったが、店主の丁寧な説明で、少しづつ、スコッチのおいしさが分かってきたような気がする。
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バーハクシ(Bar Hakushe)
店を潜るとドカーンと長いカウンター、それは分厚い、杉の1枚板である。こんな長い杉の板をどうやって店に持ち込んだのだろう?ママに尋ねると、やはり、開業前に搬入したらしい。
カウンターの中央正面には、これも、ドカーンと大きな水槽があり、熱帯魚が泳いでいる。
店主は女性のバーテンダーで、クリっとした目でキュートなママである。
お酒はすべて日本産にこだわっている。ウイスキーも山崎、白州、響、竹鶴、知多などなど、ほとんど置いている。バックミュージックもすべて日本の音楽で、昭和の歌謡なども聴こえてくる。ママに、この水槽の魚は「どこの熱帯魚かな」と聞くと、沖縄で採れた魚だという。「確かに日本製に徹してるわ」と笑う。
バーハクシは落ち着いた時間と空間を過ごせる絶好の隠れ家である。
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E-BAR
バーハクシで飲んでいた時、福島で他にいいバーありますかと、隣のお客に聞くと、「ありますよ、いいバーがあります」という。いいバーとはE-BARのことであった。
その話を聴いてから一年くらい経ったころ、偶然、あるスナックのママに連れられて行ったのが初めてだった。
これは本当に洗練されたバーだと思った。店全体の雰囲気もさることながら、店主(バーテンダー)が格好良すぎるのである。店主はタキシードに身を固め、蝶ネクタイ。まさに、超一流ホテルのバーテンダーである(実際、そうだったらしい)。
カクテルを作るときの、シェイカーを振る動作の美しさ、カクテルグラスに盛るときの柔らかい手つき、最後の一滴が盛られたときの、カクテルの表面張力の盛り上がりなど、観る人の目を楽しませる。
店主の人柄も温和で、こちらが話せば応えてくれるが、どちらかと言えば寡黙である。これも一流ホテルで磨かれた作法なのかもしれない。
やはり、福島では外せない、E-BAR(いいバー)である。