流行る店、流行らない店 ③ 粉もん
大阪名物といえば、「たこ焼き」と「お好み焼き」であろう。しかし、最近、おいしい「お好み焼き屋」が少なくなった。数十年前までは、名前の通った店が5、6軒あり、よく通ったものだ。ねぎ焼の「山本」、ジャガイモが入った「桃太郎」、「ぼてじゅう」、「風月」、「京ちゃばな」など。しかし、それらの店はすべて多店舗展開に走ったため、それぞれの店の個性的な味とサービスが失われた。今や、順番を並んで食べるほどの魅力はない。もう一度、あの頃の味を再現して欲しいと願う。
近くの「お好み焼き屋」を何軒か回ってみたが、今一、癖になるような旨みがない。それにほとんどの店でソースが塗られ過ぎである。「お好み焼き」の個性(いか、ぶた、すじなどの風味)がなくなるほどソースを塗ってどうするのか?みんな同じ味になるではないか。
大阪で本当においしい「お好み焼き屋」があったら、教えていただきたい。
最近、もんじゃ焼きなるものがチラホラと大阪に登場しだし、福島にも数軒できている。今年の1月2日の深夜、お腹をすかし、福島駅界隈を徘徊していると、一軒だけ、開けているお店があったので入った。これが「麦屋」という「もんじゃ焼き」の店だった。
わたしは、大阪人であるから、「もんじゃ焼き」などに興味もなかったし、食べたこともなかった。しかし、これが予想外に味わい深い「粉もの」であることを発見した。
まず、小麦粉ともち米粉を水かだしで溶いて、それに、キャベツ、すじにく、こんにゃく、紅ショウガなどをごちゃまぜにする。鉄板の中央に、具がいっぱい入った生地で、小高い山を作る。その後、山の真ん中を上からこじ開けて、ため池を作り、そこに、残ったお汁を注いでから、あとはそれらを画面いっぱいに広げる。それで終わりである。だだっ広い「もんじゃ」を周りから、チビチビと小さな「てこ」で押さえて焼きながら剝ぎ取っていく。このことによって、焼き始めの柔らかい生地の味わいと、焼きが進んだおこげの香ばしい味わいの両方が味わえるというわけだ(もんじゃ焼きをよく知っている方にはバカにされそうな説明ですが(笑))。
周りから、みんなでつつきながら食べるというのが、庶民的な情緒があり、会話もお酒も弾む。この「もんじゃ焼き」の居酒屋カルチャーは「お好み焼き」にはない。わたしのような「お酒飲み」から見たら、「お好み焼き」は「もんじゃ焼き」に到底勝てないと思った。それにメニューも豊富だ。明太子もちチーズ、牛すじカレーチーズ、四川風マーボー、梅おかか納豆など。夏木マリスペシャルなんていう興味をそそられるメニューもある。
いずれにしても、「お好み焼」は、なんらかの革命(味、メニュー、見せ方など)を起こさないと、「もんじゃ焼き」に負けると思う。
最後に、たこ焼き屋であるが、これは、福島一番の店が浄正橋付近にある「多幸屋 」。小道に面して同じ店が2軒ある。居酒屋バー風の店でよく流行っている。店員は明るく威勢がよい。この店の特徴は、すべてのタコが大きく、プリプリで新しい。そして、値段が安い。それにたこ焼きのメニューも、明太子チーズ、ガーリック、塩ゴマ油など豊富である。ペペロンチーノなど、たこ焼きのイメージを一新するものである。「たこ焼き屋」なのに居酒屋バー、だから、刺身あり、カルパッチョあり、サラダあり、から揚げ、てんぷらありである。そして、コスパは最高。まあ、食べて、飲んでも3,000円以上使うのは難しいだろう。
以上、「粉もん」を見てきたが、流行る店の特報は、①うまい。②安い。③ホール係が明るく元気がいい。④メニューが豊富で楽しいことになる。