奥原希望、金、リオの雪辱を果たす
奥原希望(のぞみ)が、8月28日スコットランド・グラスゴーでのバトミントン世界大会でついに金メダルを取った(40年ぶり)。決勝での対戦相手はなんと昨年のリオ・オリンピックの準決勝で当たったプサルラ・シンドゥ(インド)だった。リオでは0対2と歯が立たなかった相手だが、1対2のスコア―でゲーム内容は19対21,22対20,20対22,の接戦、まさに死闘であった。最終ゲームも19対17と追い込まれながら、20対22と際どく逆転し、雪辱を果たした。
奥原選手は、準々決勝でリオの金メダリスト、カロリーナ・マリン(スペイン・世界ランキング3位)を下しているが、この試合も決勝戦に負けないくらいの接戦だった。また準決勝ではサイナ・ネワール(インド・世界ランキング2位)を破っている。このような天才的な強豪との競り合いを勝ち抜く、奥原選手の強靭な精神力には驚嘆する。
まず、身体的にみると、身長はプサルラが179㎝、カロリーナが172㎝、奥原が156㎝と20㎝ほども違う。背が高ければ当然高い位置から、スマッシュできるから、それははるかに有利であろう。身長では負けている奥原が勝つ条件は何だろう。
まず、球がどこに落ちても拾えるフットワークが際立っている。もうこの能力は世界一と言ってもよい。この身体能力を鍛えすぎたため、過去に膝の故障が起こったのだろう。しかし、受けているだけでは勝負は勝てない。つまり効果的な攻撃が瞬時に浮かぶ、戦略的な頭脳の持ち主でなくてはならない。このひらめきも又おそらく世界一だと思う。奥原選手は粘り強く受けながら、左右コート一杯に、またボールを高く上げて、後ろに引かせ、相手の疲労とミスを誘い、その後、隙を見て、コート際に鋭く攻める。決勝も準準決勝もこの勝ち方だった。
奥原選手は過去に膝の故障を抱え2年ほど休場していた時期もあり(2回手術している)、この大会の直前の大会でも、右肩の故障で、試合を棄権したこともある。そんな困難を乗り越えての優勝であるから、その喜びもひとしおであったろうと推察される。
そもそも、わたしがバトミントンの試合を本当に面白いと感じたのは、リオ・オリンピックでの高橋・松友ペアーのダブルスの試合からであった。彼女たちはどこに落ちた球も拾い打ち返す。時には、ネットすれすれに鋭く、時には、天高く舞い上がり、ストンとコートラインぎりぎりに落ちる。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」とはあのことであろう。バトミントンのシャトル(羽)は水鳥の羽(天然素材)で作られているので、あのように変幻自在な動きをするのだろう。決勝での最終ゲームでは16対19と追い込まれながら、一気に5連続のポイントを取って、金メダルをもぎ取った。競馬でいえば、最後の直線で、一気に追い越したような鮮やかな勝ち方だった。
さて、最近いろんな試合を見て感じるのは、日本の選手の実力とマインドが強くなってきたということである。リオでは過去最高のメダル、41個を獲得した。今回のバトミントン世界大会でも4個のメダルを獲得している。マインドが強くなったと感じるのは追い込まれてからの逆転劇が多くなったからである。
まさかアベノミクス効果がこんなところに出ているとは思わないが、日本も70年前の敗戦の痛手から立ち直って、そろそろ強いマインド(精神)を持った日本人に生れ変わりつつあるのではないか?
強い経済の日本、強いスポーツの日本、素晴らしい科学、文化の日本で、次の世代を迎えて欲しいと思う。日本に魅力が増えれば、その結果、日本の人口ももっと増え、人材不足に悩むこともないだろう。
とりあえずは、次期東京オリンピックでメダル50個以上を獲得して欲しいと願う。
そして、それは、決して夢ではないと思う。