安倍内閣の賞味期限 ②

加計学園問題をめぐるメディアの報道

1 安倍首相にかけられた疑念

簡単に説明する。まず、獣医学部は地方では不足しており、愛媛県は15回も申請していたが文科省は許可しなかった。安倍内閣になり、戦略特区の一環として、愛媛県今治に悲願の加計学園獣医学部の新設が許可された。安倍首相と加計学園理事長の加計幸太郎氏は腹心の友であるらしい。ということで、文科省が許可しなかった獣医学部を、加計学園が新設できたのは、安倍首相が文科省に何らかの圧力をかけたのではないかとの疑いが、野党からかけられることになった。そして、「総理の意向」なる圧力文書が文科省に送られたという証言が、前事務次官の前川喜平氏からあったので、事態は混乱した。前川氏は国会で証人喚問を受けることになる。

これに対して、安倍首相側からは、元愛媛県知事の加戸守行氏が証人となった。加戸氏ももともと文部官僚で前川氏の先輩に当たり、文化庁次長、文化庁大臣官房長官を歴任した後、愛媛県知事に当選された人物で、1999年から2010年まで在任された。加戸氏は「愛媛県に獣医学部の新設を」と12年にわたり、辛抱強く、文科省に働きかけてきた情熱的な政治家である。

2 前川喜平氏と加戸守行氏との対決

この加計学園問題をめぐって、前川氏と加戸氏の両氏が、国会で対決した。ネット中継では一部始終見ることができるので、ぜひ見られると面白い。

前川氏は「安倍総理が行政を著しく歪めて、獣医学部新設を認めるよう行政に圧力をかけた。安倍総理が何らかの圧力をかけた文書が残っている。」と主張した。

(注)ただし、松野博一文科大臣は、そのような圧力をかけられたことはないし、文科行政が歪められたという認識は全く当たらない。適正な手続きで国家戦略特区が進められている。」と述べている。

加戸氏は「行政を歪めたのではなく、歪められた行政を正した。国家戦略特区を活用して岩盤規制を突破したのだ」と主張し、霞が関官僚の天下り利権にまで、言及した。(四国の愛媛に獣医学部を新設しても遠くて天下れないからと。)

どちらの人物を信用するかであるが、これはもう火を見るより明らかである。前川氏は、たえず自信なさげな表情を見せ、態度が怪しげなのに対して、加戸氏は終始、毅然として武士のごとくであった。加戸氏は前川氏に対して「よくそこまで想像をたくましくしてモノが言えるのか、自分の後輩ながら精神構造を疑う」とまで言っておられる。まあ、前川氏の座右の銘が「面従腹背(めんじゅうふくはい)」であるから、さも有りなんである。

詳しくはネット中継を観ていただくとして、問題は真っ向から対立する二人の意見や、映像を、新聞とテレビのメディアが、どの程度、正確にかつフェアーに、読者と視聴者に伝えたかである。

3 各メディアの前川対加戸の報道濃度と安倍内閣支持率の対応関係

3-1 各メディアの報道と時間

メディア 前川氏の報道 加戸氏の報道 安倍内閣支持率
NHK 8分35秒 × 35%
テレビ朝日 16分13秒 27秒
フジテレビ 10分54秒 1分56秒
朝日新聞 × 33%
毎日新聞 × 26%
読売新聞 42%
日経新聞 × 46%
産経新聞 43%
ニコニコ 54%

 

3-2 安倍内閣支持率との対応関係

まず、加戸氏の報道がまったくないのが、NHK,朝日新聞、毎日新聞、日経新聞で、読売新聞と産経新聞とニコニコ動画ではフェアーに報道している。安倍内閣支持率をワーストから並べてみると、毎日新聞26%、朝日新聞33%、NHK35%、読売新聞42%、産経新聞43%、日経新聞46%、ニコニコ54%となる。

各メディアの報道姿勢と安倍内閣支持率が恐ろしいほど対応している。これでは、本当に真面目に世論調査が行われたのかどうか疑問を持たざるを得ない。言い換えると、メディアの主張したい答え(内閣支持率)が先にあって、世論調査という手段を用いて公平性を維持しているかのようにカムフラージュしているだけではないのか?

もっともっとサンプル数を増やし、かつ、どのような方法でどの程度の母集団を使っているのかを、利害関係のない第三者に証明でもしてもらわない限り、内閣支持率など信用するに値しない数値である。そして、その後に続く「安倍内閣末期症状」的な偏った論評など、言わずもがなである。

文責 増井 高一

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