「中島みゆき」が大好き ② 狼になりたい

1 深夜、吉野家で

女々しい失恋歌を歌わせれば、当代随一の中島みゆきだが、こんな骨っぽいロックも作ってしまう。

♪夜明け間際の吉野家では
化粧のはげかけたシティガールと
ベイビー・フェイスの狼たち 肘をついて眠る

なんとかしようと思ってたのに
こんな日に限って朝が早い
兄イ、俺の分はやく作れよ
そいつよりこっちのが先だぜ

買ったばかりのアロハは どしゃ降り雨でよれよれ
まぁいいさ この女の化粧も同じようなもんだぜ♪

中島みゆきはもともと吉野家の牛丼の大ファンだったらしい。歌は深夜の吉野家での風景で始まる。
そこでは夜の仕事が終わったシティガール、これから仕事に赴く日雇い労働者の顔が見える。

ベイビーフェイスの狼たちは、どうも仕事にありつけず、いらついている。
おまけに、買ったばかりのアロハは雨でよれよれだ。いらつきが頂点に達する。そこで、

♪狼になりたい 狼になりたい ただ一度

このサビの、どすの効いた歌いっぷりはどうだろう?まさにロックンロールである。

2 富める者への妬みと鬱憤

世間は不公平に満ち溢れている。富めるものと貧しいもの、ホワイトカラーとブルーカラー、支配するものと支配されるものなど、しかし、ホワイトカラーのサラリーマンも、組織に縛られている。それでも妬ましい羨ましい。

♪人形 みたいでもいいよな 笑えるやつはいいよな
みんな、 いいことしてやがんのにな
いいことしてやがんのにな ビールはまだか♪

ついに鬱屈が爆発して、「ビールはまだか」とお店に八つ当たり、そこで、

♪狼になりたい 狼になりたい ただ一度♪

サビの歌い声は増々でかくなってくる。

3 ナナハンを乗り回す暴走族か?

ベイビーフェイスの狼たちは暴走族か?かれらが狼になれるのはナナハンを乗り回しているときかもしれない。ナナハンを乗り回して女の子をナンパする。

♪俺のナナハンで行けるのは 町でも海でもどこでも
ねぇあんた 乗せてやろうか
どこまでも どこまでも どこまでも どこまでも♪

「どこまでも」「どこまでも」の4回のリフレイン にしびれる。そして

♪狼になりたい 狼になりたい ただ一度
狼になりたい 狼になりたい ただ一度♪

聲のボリュームはマックスでしわがれている。最後の「もう一度」の嘆息がなんとも切ない。

いかなる人も、自分の置かれた現状に満足はしていないし、また、何らかの組織や家族や常識に縛られている。
ときに、一切の足かせを外して、「自由な狼になりたい」という願望は誰しもが持っていると思う。

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